白い蝶の野へ行きかけた祖母
どんな伝承か
神奈川県相模原市の杉本房江が中学生だったころ、祖母が自宅で息を引き取った。七十六歳で、おそらく老衰だろうと家族は見ていた。娘や息子が枕元を囲み、意識が薄れるたびにしっかりしてと声をかける。それを何度か繰り返したとき、祖母が目を開けてこう言った。もう呼ばないでほしい、白い蝶がたくさん飛んでいて花も咲いている、そこへ行こうとするとお前たちが呼ぶので戻ってきてしまう、と。息も絶え絶えの言葉だった。叔母たちは天国へ行くのだと察して呼びかけをやめ、ほどなく祖母は臨終を迎えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。