浮き沈みの果ての赤い太鼓橋
どんな伝承か
東京都港区の森貝光子は六十八歳。十九歳のとき肋膜炎にかかり、高熱が一週間続いた。熱を下げる薬もなくただ寝ているうち、急に体が浮いて部屋の隅へ吸い込まれるように上がり、また下がってきた。まるでエレベーターに乗っているようだったという。それが七、八回続いた末に穴へ吸い込まれ、気がつくと目の前に赤い太鼓橋があり、あたりは花園で音楽も聞こえた気がするという。橋の下の川には子どもの頃の遊び友達が大勢いて、着物の裾を引きながら、いい所へ連れていってあげるから一緒に来いと誘った。新しい下駄がないからと断るうちに目が覚め、枕元では家族が泣いていた。祖母が渋団扇であおぐ風の感覚が浮き沈みの正体かという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。