宮から聞こえた神々の宴の音
どんな伝承か
閏十月十日の夜十時ごろ、春が、今夜は宮に客神が来て踊りでもしているのか、琴の音や神々の囃す声が聞こえて賑やかだと言った。父をはじめ家の者が耳を澄ますと、たしかに宮の方角から、遠音ながら賑やかな音がしきりに聞こえた。ただし琴の音だけは聞こえなかった。父がすぐ宮へ行って様子をうかがうと、何の音もせず静まりかえり、空には寒々と月が冴えわたって、ただ何となくもの凄い気配がするばかりだったという。
原典より
此夜四ツ時の比、春女云けるは、今夜は宮に御客神あるによりておどりなどあそばさるにや、琴の音などきこえ、神々の高音にてはやさせ玉ふ音聞えていとく賑やかなりというゆえ、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。