伊勢大橋で天狗に出会った少年
どんな伝承か
明治十四年の暮れ、桑名の生花商「花嘉」の長男で九歳の外川初次郎は、継母と父に打ちすえられたうえ、日が暮れてから二十キロ先の美濃の松山まで断りの使いに行けと家を追い出された。裸足のまま揖斐川沿いを泣きながら歩き、伊勢大橋まで来たところで、背丈が六尺もある白髪の老人に名を呼ばれる。老人は家の事情をすべて知っていて、手を引いて歩くとわずか一時間で松山に着いた。三日後に迎えに来た老人は少年を連れて伊勢神宮や平安神宮など各地の神社を十日で巡り、別れ際に、自分は多度山の天狗で、生前は治田村新町の城主加納郁雄だったと明かしたという。
原典より
振りかえると、六尺(約二メートル)もある背丈の九十歳は超えているのではなかろうかと思われる白髪の老人であった。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。