天狗に手を引かれ空を飛んだ初次郎
どんな伝承か
外川初次郎は家業の生花商を継いだがうまくいかず、職を転々とするうち、風眼を患ってほとんど目が見えなくなった。それを哀れんだのか、天狗の加納はたびたび現れては初次郎の手を取り、空を飛んで方々の土地へ連れて行った。目を閉じると体がふわりと浮き、強い風圧を感じたかと思うともう着いているといい、多度山を拠点に鈴鹿山脈の福王山を最初の中継地として飛び立つ決まった道筋があった。日露戦争のころには朝鮮の竜山まで行ったという。大正十四年の天長節には多度神社に呼ばれて外天坊の名を授かり、昭和三年に五十七歳で世を去った。
原典より
天狗と空を飛ぶとき、初さんは天狗の手を握り、眼を閉じる。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。