妻を連れに来た若死にの夫
どんな伝承か
土淵村字栃内の澁川の某という男は、傷寒か何かの病気で若死にしたが、その葬式の晩から妻のところへ毎晩訪ねて来て、とてもお前を残したのでは行く処へ行けないから一緒に連れに来た、と言った。他の者の目には何も見えなかったが、その女房は毎夜十時頃になると、ほれあそこへ来た、などと言って苦しみ悶えて、七日目にとうとう死んでしまったという。三十年近くも前の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が著した日本文学の幽霊論である。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『今昔物語集』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じたのち、物語・説話・能と歌舞伎・近代の章を立て、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。