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終電車に乗り消える老婆

所在地東京都港区(金杉橋)
年代大正13年春・前年暮に死亡
登場神明町の下駄屋の婆さん、車掌
出典日本の幽霊たち ― 怨念の系譜

どんな伝承か

大正十三年の春、芝の宇田川町を通って三田へ向かう終電車に、風呂敷を背負った六十がらみの老婆がひょいと乗り込むという噂が立った。息をせかせかとさせているので車掌が切符を切ろうとすると、大門と金杉橋のあいだあたりで、すうっと消えてしまう。前年の暮れ、神明町の下駄屋の老婆が貸した烏金を取り立てた帰り、宇田川町の鳥屋の前で電車に轢かれて死んでいた。財布には三十円が入っていたという。芝から麻布のあたりでは、金に未練を残した婆さんの怨霊が電車に乗るのだと評判になった。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)

『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。

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