襖の隙間から招く細手長手
どんな伝承か
土淵村火石の北川という家での話。よそへ出ていたこの家の叔父が泊まりに来て奥座敷で寝ていると、神仏を祀った隣の部屋の襖の隙間から、細く長い手がすうっと伸びてきて、こちらを手招きするように見えたという。この手は俗に細手長手と呼ばれ、家の吉凶や禍福に合わせて人の家に現れるものとされている。佐々木喜善はこれもザシキワラシの仲間だろうと考え、ザシキワラシの話と並べて書き留めた。
原典より
土淵村火石の、北川という家の奥座敷に、この家から他へ行っておる叔父が、泊りに来て寝ておると、神仏を祭ってある次の室の襖のすき間から、細い長い手が出て、自分を招くようであった。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。