卵塔場で夫の笛に逢う妻
どんな伝承か
昔、仙台の勘之丞という若者が放埒のため勘当され、江戸へ出て尺八を吹いて日々の暮らしを立てていた。呉服屋の店先で吹いたとき、娘のお銀と互いに見交わして想い合い、勘之丞は身分を隠して同家の早助奉公に住み込む。風呂の湯に浮かべたツケ木の文で名乗り、恋煩いに臥していた娘と結ばれて子まで儲けた。やがて故郷が恋しくなって仙台へ帰り、そのまま病んで死ぬ。帰りを待ちかねたお銀が仙台へ下る日、野中で灯を頼りに庵寺へ泊まると、笛を吹きながら夫が現れ、その膝を枕に眠った。翌日目覚めると、そこは野中の卵塔場で、七本仏を枕にしていた。墓参に来た舅姑と嫁だと知れ、掻き口説いて泣いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。