小梅の別荘で誘う牝狐と名優の弟
どんな伝承か
江戸の名優岩井半四郎の弟が、向島へ行こうとして小梅の水府別荘のあたりを通りかかると、芸妓のような女が立っていて、自分の家へ来ないかと誘った。器量に引かれてついて行くと厚くもてなされ、翌日の約束まで交わす。それから毎日通い、明け方に帰る日が続いた。家の者に問われても向島とだけ答えていたが、しだいに顔色が衰えていく。問い詰められて白状すると、家人は野狐に違いないと止めた。それでも離れられぬと言って通い続け、ついに衰えて死んだ。翌朝、庭に狐が死んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・昭和初期(1927))
心霊研究家・岡田建文が昭和二年(一九二七)に著した『動物界霊異誌』。現代物理は宇宙の大物理の末梢に過ぎぬとの立場から、動物の霊異を迷信的虚妄として退けず証明すべき事例として収集する。蝦蟇(ヒキガエル)の章では、蛇を埋めてクリ茸を生やし食う怪(島根波根東村)、背に五寸釘を刺され口から怪光を吐く大蝦蟇(会津若松龍田屋、同時に幼児が高熱)、猫を灰色の液汁に溶かす怪(石見久利村)、慶応二年に浄土寺へ夜ごと現れた武士の正体が蝦蟇だった話を収める。