切腹の翌日に現れた昼の幽霊
どんな伝承か
延宝二年の土佐の話である。浦奉行岡野源兵衛の配下浜田六之丞は多額の金を扱ううちに監守盗の罪を犯し、死刑となって一家三族もことごとく果てた。紀州で剣術を修めていた弟の吉兵衛は国元の報せに驚いて土佐へ帰り、城下から一里ほどの洲崎に上陸して村役人へ自ら仕置きを願い出た。その殊勝な心を愛でられて切腹を許され、いさぎよく相果てた。ところが翌日の昼ごろ、岡野源兵衛の家に吉兵衛が現れ、師家から届くはずの伝書を焼き捨ててほしいと頼んで去った。足もあり水漬け二杯の馳走まで受けたので、居合わせた僕の平尾弥五郎と市田与平次が後を追ったが影を見失ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。