倉の中で果てた両家のわらし
どんな伝承か
遠野郷の附馬牛村のある家に、夫婦の座敷わらしが住んでいた。その連れ合いが死んだので、残ったわらしは隣の家へ移った。それはわらしの足あとで分かった。それから、もとの家は急に不運なことが起こって次第に衰えてゆき、これに引きかえ隣の家はすっかり栄え出した。もとの家の者がそれを妬んで、隣の家に付け火をしたという。一説には、両家とも旧家でどちらにもわらしがおり、秋の取り入れの頃、倉の中で喧嘩のような物音がした。覗くと見たこともない美しい子どもが死んでおり、傷一つないのに床板の下は血がいっぱいであったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。