鍋で油煎にされたわら人形
どんな伝承か
千住に西念という物乞いの坊主がいた。鉦を鳴らしては浅草あたりを回り、こつこつと小金を貯めていたのを、千住の女郎屋若松のお熊が朋輩と示し合わせ、手管で三十両を巻き上げる。のちに金に窮した西念が借りに行くと、お熊は騙し取ったのだと悪態をつき、男たちが西念を外へ突き出した。額を割り顔を血に染めて庵へ戻った西念は、そのまま寝ついてしまう。牢帰りの甥の甚吉が看病するが、西念は竈にかけた鍋を見るなと固く戒めた。留守に覗いた甚吉が見たのは、油で煎られたわら人形であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。