八十三まで来るなと返された見島の老婆
どんな伝承か
山口県の見島に住むある老婆は、一度死んで極楽へ行ってきたと語っていた。あの世では、先に亡くなった父が渡し舟に乗っていたので、自分も乗せてもらおうとすると、船頭に、お前は八十三になるまで来る所ではないと言われ、ミナワではね返された。そこで生き返ったのだという。老婆は、もし自分が本当に八十三で死んだら、あの世はあるものと思えと言い残していたが、果たして八十三歳で亡くなったと伝えられている。昭和十二年に島を訪ねた瀬川清子が聞いた話である。
原典より
死んで極楽へ行ったら、前に亡くなった父が渡舟に乗っているので、自分も乗ろうとしたら『お前は八十三まで来る所ではない』と船頭にミナワではね返された。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。