棺を吊り上げた赤トラ猫と南無トラヤー
どんな伝承か
名取のある寺の和尚が、トラという赤トラ猫を飼っていた。和尚はトラを大変かわいがり、つねづね、いつか恩返しをしろと言い聞かせていた。あるとき大尽の家で死人が出て葬式をすることになったが、高名な和尚をたくさん集めても地元の和尚は呼ばれない。すると赤トラ猫は魔がさして、埋葬しようとした棺箱を空中に吊り上げてしまう。高名な和尚が次々に経を読んでも効き目がない。呼ばれた地元の和尚がトラの仕業と見抜き、南無トラやァーと拝むと棺箱は下りてきた。以来、死人の上に魔よけの刃物を置くようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。