大島で潮を変えた三十三間堂の棟木
どんな伝承か
三十三間堂の棟木となった柳の大木は、熊野川の奥に育ったものだという。伐り出された棟木は川を下り、千石船に曳かれて大島の港まで来たが、そこから先の潮の岬は名うての難所で、船はどうしても出せなかった。凪いだ日を選んでも帆が濡れ、無理に出れば曳き綱が切れる。困った一行が都へ使者を立てると、僧が幾人も下って来て、大島の戎のはなで幾日も潮の祈禱と供養を行った。すると下り潮が上り潮に変わり、棟木はようやく岬を越えた。ただし潮を戻す祈禱を怠ったため、その後は不漁が続いたという。
原典より
熊野川の奥に楊子の薬師様という小さな無住のお堂がある。—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。