阿倍野の松原に消えた友の亡霊
どんな伝承か
謡曲『松虫』は、松虫の音に友を忍ぶという言葉の由来をこう語らせる。昔、阿倍野の松原を二人連れで通った者があった。折しも松虫の声が面白く聞こえたので、一人がその音を慕って分け入っていった。もう一人はしばらく待ったが戻らないので、心もとなく思って尋ね行くと、連れは草の露に臥して息絶えていた。ともに死のうと思っていたのにこれはどうしたことかと泣き悲しんだが甲斐はない。そのまま土に埋めて人に知られぬはずと思っていたのに、朽ちもせず松虫の名とともに世に漏れたのが悲しいと、亡霊は村人に身を変えて現れ、阿倍野の方へ去っていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第9巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全100話(奈良・大阪・和歌山・三重=近畿南部/紀伊)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。