岩魚を奪ったたまり池の古狐
どんな伝承か
沓野山の七不思議の四つ目。たまり池には古狐が棲みつき、よく人を化かしたという。あるとき伝助という老人が山仕事の帰りに川干しをして岩魚をたくさん捕り、馬の鞍にくくりつけて帰途についた。琵琶池からたまり池にさしかかると、急に霧が巻いて暗くなり、馬の後ろからパタパタと足音のような音がついてくる。ここの古狐だな、だまされるものかと用心して道を急いだが、いくら歩いても家に着かない。急に霧が晴れると、そこは元の琵琶池のほとりで、鞍の岩魚はそっくり消えていた。
原典より
ところが驚いたことに、あれほど歩いたのにもとの琵琶池のほとりだった。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。