中山の女神と椿を守った禁制
どんな伝承か
男鹿半島の椿浦は、今はもう村の名だけになろうとしているが、村のまん中にわずかな小山があってこれを中山といい、その麓には美しい清水がある。椿はこの中山だけに茂っていたので、山には女の神が祀られていた。古い石碑もあるというが、登れば暴風雨があるという信仰から、もとは旅人が近づくことを厳禁していた。まして椿の枝などは手も触れさせなかったので、少なくともその保存だけは人の力によるものであった。人家に取り囲まれた離れ山であったから相応の保護もできたので、天然記念物と呼ぶならば、それは人間の心をも引きくるめての天然であったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。