節句の晩の海嘯に消えた八つの子
どんな伝承か
唐桑浜の宿という部落では、四十戸足らずの家のうち、ただ一戸を残して悉くあの海嘯で潰れた。残ったという家でも床の上に四尺水が上がり、瞬く間にさっと引いて、浮くほどの物はすべて持って行かれた。その上に男の子を一人亡くしている。八つになる誠におとなしい子であったという。道の傍で店を出している婆さんのところへ泊まりに行っており、明日はどこそこへお参りに行くのだから戻っているようにと迎えを遣ったが、おら詣りたうなござんす、と言って、ついに永遠に還って来なかった。時刻はちょうど旧五月五日、月が入ったばかりであった。恐ろしい大雨であったが節句の晩なので、人の家へ行って飲み、酔い倒れて還れずに助かった者もあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。