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節句の晩の海嘯に消えた八つの子

所在地宮城県気仙沼市唐桑浜の宿
年代明治二十九年
登場八歳のおとなしい男児、迎えの家人
出典定本柳田国男集 第2巻

どんな伝承か

唐桑浜の宿という部落では、四十戸足らずの家のうち、ただ一戸を残して悉くあの海嘯で潰れた。残ったという家でも床の上に四尺水が上がり、瞬く間にさっと引いて、浮くほどの物はすべて持って行かれた。その上に男の子を一人亡くしている。八つになる誠におとなしい子であったという。道の傍で店を出している婆さんのところへ泊まりに行っており、明日はどこそこへお参りに行くのだから戻っているようにと迎えを遣ったが、おら詣りたうなござんす、と言って、ついに永遠に還って来なかった。時刻はちょうど旧五月五日、月が入ったばかりであった。恐ろしい大雨であったが節句の晩なので、人の家へ行って飲み、酔い倒れて還れずに助かった者もあった。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)

『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。

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