乳を含ませて子を守った母
どんな伝承か
唐桑浜の宿の海嘯の夜、母親は中の間で乳呑児と一緒にいた。どんなことがあってもこの子は放すまいと思い、左の手で精一杯に抱えていたという。乳房を含ませていたために、赤子は潮水を少しも飲まなかった。山に上がって夜通し焚火の傍にじっとしていたので、翌朝見ると赤子の顔から頭にかけて、煤の埃で胡麻あえのようになっていたそうである。その赤子が長じて歩兵に出て、その年にはもう還って来ていた。よほど孝行をしてもらわなければと、老母はよく言うという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。