白望の山の怪光と金の樋
どんな伝承か
白望の山に行って泊まると、深夜にあたりが薄明るくなることがある。秋の頃、茸を採りに行って山中に宿する者はよくこの事に遭う。また谷の彼方で大木を伐り倒す音や歌の声などが聞こえることもある。五月に萱を刈りに行く時、遠く望めば桐の花の咲き満ちた山があり、紫の雲がたなびくようであるが、ついにそのあたりに近づくことはできない。かつて茸を採りに入った者が、白望の山奥で金の樋と金の杓子を見た。持ち帰ろうとすると極めて重く、鎌で片端を削り取ろうとしてもかなわない。また来ようと樹の皮を白く削り標としたが、次の日行って求めても、ついにその木のありかさえ見出せずに終わったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。