越中蘇夫獄の一眼双脚の山霊
どんな伝承か
越中の旧事を記した肯構泉達録の巻十五によれば、婦負郡の蘇夫獄の山霊は目が一つで脚が二本の妖怪だという。かつて炭を焼く者二人がこれに殺され、少し水のある葦や茅の中に投げ捨てられていた。また麓の桂原という里の者が夫婦で薪を採りに山へ登り、やはり殺された。脳を吸うと見えて、頭の頂に大きな穴が開いていたという。書物は、山海経にいう独脚鬼ではないかと記す。柳田は、上野にも越中にも飛騨にも近江にも土佐にも一つ目の怪物を見た聞いたという話がこれほど多いのには、何か然るべき理由がなければならないと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。