箱根の魚を米に換える山男
どんな伝承か
相州箱根の山男は裸体で、木の葉や樹皮を衣としていた。深山にあって魚を捕るのを業とし、市の立つ日を知っていてこれを里に持って来て米と交易した。人に馴れて怪しむこともなく、売買のほかに多言せず、用事が終われば去った。その跡を追って行方を知ろうとした人もあったが、絶壁の道もない処を鳥が飛ぶように去るので、ついに住所を知ることができなかったという。小田原の領主からも、人に害を成す者ではないから必ず鉄砲などで撃つなと制せられていたので、あえて驚かす者はなかった。譚海巻十一に見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。