甘木の乙子市の山姥の帷子
どんな伝承か
正徳四年成立の山姥帷子記によれば、天正の頃、筑前甘木の乙子市に木綿の綿を売りに出た下見村の富人大納言の下僕が、途中で仮寝をして市に間に合わなかった。目覚めると袋の綿が消え、代わりに青黄黒白の段染めの帷子一枚が入っていたという。これは山姥の物と認められ、宝物として二百年伝えられたと語り継がれている。信州安曇でも暮れの市に山姥が買物に出るという類話があり、柳田国男はこれらを併せて紹介している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。