金沢の篠原庄兵衛と投げ返された犬
どんな伝承か
『今斉諧』巻二に載る話。加賀金沢の武士篠原庄兵衛が、あるとき人跡の絶えた深山に入り、葦の茂る谷川の岸を歩いていると、水を隔てた対岸から大勢が向かい合って談笑する声が聞こえてきた。篠原は不審に思い自ら渡ろうとしたが、水に遮られて渡れない。連れていた犬をけしかけても行こうとしないので、犬の四本の足をつかみ、力の限り葦原の向こうへ投げた。すると対岸から、その犬がすぐさま投げ返されてきた。恐ろしくなった篠原は家へ逃げ帰り、犬には薬を飲ませたが、ついに死んでしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。