⑤ 神輿のおたちについて
どんな伝承か
行徳のある家には神輿に付く二本の刀、おたちが伝わる。貧しい家なのになぜ町内の刀を預かるのかと話者が父に尋ねると、昔、神輿に付き添う侍の持ち物で、下郎の三平という持ち主が神輿に付く侍のお付きだったため、その刀を代々家で守ってきたのだと語った。刀はよそへ持ち出せない。以前、ある人が欲を出して返せと言ってきたので父が渡したところ、その人はうなされて病気になり、とてもかなわないと刀を戻してきた。持つ者はその家を継ぐ者でなくてはならず、父の死後は弟、養子、弟の子と受け継がれている。
原典より
神輿についている刀はね、おたちってのは二本あるのヨ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。