④ からくり(八百屋お七)
どんな伝承か
行徳の語り手の家は亀戸天神の藤の花の盛りに商いに出ていた。昔は紙芝居や、紐を引いて絵を出す「からくり」で飴を売る者がいて、姉がそれを見て帰り、語り手によく話してくれた。演目は八百屋お七で、十七のとき家が火事になり寺に預けられたお七が若い僧の吉ざと恋仲になり、家に戻ってからも会いたさに自分の家へ火を付けて捕らえられる。裁いた越前の守は「お七は十四だろうな」と念を押して助けようとしたが、お七は正直に十五と答えて火あぶりと決まった。姉はそのくだりの唄を覚えて歌ってくれ、越前は偉い役人だと語ったという。
原典より
亀戸天神では、藤の花がさかりの時に家では、商いに行くんですよ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。