娘の装束で大蛇を斬った鉈切の神
どんな伝承か
館山の鉈切神社の神が相模から初めてこの地へ来ると、どこからか泣き声が聞こえる。訪ねると浜田の長者の家に村人が集まって悲しんでおり、長者は、この地の紫池に棲む怪物が毎年人身御供を求め、今年は一人娘の番になったと泣いた。神は自分が退治しようと娘の装束をまとい、手斧を持って池のほとりに立つ。にわかに空が曇り風と波が渦巻いて大蛇が現れ娘を食おうとしたが、神は手斧で斬って退治し、さらに岩を切り割って池の水を流し、村の憂いを絶った。鉈切の洞窟は大蛇の棲み処で、時折蛇の骨が出たという。今も退治に使った鉈や鉈置岩、紫池の跡という小さな水たまりが残り、かつては鉈洗井戸や鉈掛松もあったと伝えられる。
原典より
館山市の鉈切神社の神が、相模の国から初めてこの地に来ると、どこからともなく人の泣声が聞えてくる。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。