入峰の夜に聞こえた笛と雨の音
どんな伝承か
羽黒山の入峰修業中には不思議なことがしばしばあったという。法螺役として毎年入峰した手向の常光坊という山伏の話では、勤めが終わって秋の夜が更ける頃、遠くからかすかに笛のような音が聞こえはじめ、やがて籠堂の方へ近づいてくる。物影は見えず、音の出どころも分からない。しかも笛の音は皆に聞こえるわけではなく、並んでいても聞こえる者と聞こえない者があった。月が出ていても木の葉を叩き落とすような雨音がすることもあり、軒端から白く光る雨だれが落ちるのを見た者さえいたが、地面は少しも濡れなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。