入峰の夜に聞こえた笛と雨の音
どんな伝承か
羽黒山の入峰修業中には不思議なことがしばしばあったという。法螺役として毎年入峰した手向の常光坊という山伏の話では、勤めが終わって秋の夜が更ける頃、遠くからかすかに笛のような音が聞こえはじめ、やがて籠堂の方へ近づいてくる。物影は見えず、音の出どころも分からない。しかも笛の音は皆に聞こえるわけではなく、並んでいても聞こえる者と聞こえない者があった。月が出ていても木の葉を叩き落とすような雨音がすることもあり、軒端から白く光る雨だれが落ちるのを見た者さえいたが、地面は少しも濡れなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。