夢で見た藪かげの家
どんな伝承か
昭和十年ごろ、語り手は板橋区練馬南町に住んでいた。あたりはまだ武蔵野の面影が濃く、雑木林とゆるやかに起伏する畑が続いていて、子どもながらひとりで歩き回るのが好きだった。ある日、藪かげを回ったところで息をのんだ。林の奥まったところに建つ家、その門のあたりが、以前夢に見た風景とそっくりだったのである。しんと静まりかえった恐ろしさは今も忘れられないという。もう一度行ってみたくてあとから何度も探したが、歩き慣れた土地なのに、そこへは二度と出られなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。