大塔山で迷った父と寝た狼
どんな伝承か
和歌山県西牟婁郡の話。話者の父は蚕種の世話や絹の買い付けで西牟婁ばかりを回り、昼の暑さを避けて夜に歩いていた。近露のあたりで近道を教わり、中辺路の方から近道しようとして大塔山の方へ迷い込み、ちょうど本宮の祭りのころに三日間山中をさまよった。一日歩いても元の所へ戻ってしまう始末で、ようやく小屋を見つけて寝ていると、最初の晩に犬がやって来たので、弁当の握り飯などを分けてやった。あとで、あんな山奥に犬が来るはずはない、あれは狼だったと聞かされた。狼が人を食うというのは嘘で、人を助けるものだと父は話していたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。