集音機の真下で囁き合った恋の台詞
どんな伝承か
昭和一九年秋、私は仙台中央放送局に勤めたばかりだった。戦運の暗いなか、事務職の私と違って技術職の人たちは軍の依頼で電波の研究に励んでいた。二三歳の私は同僚のM子に恋をしており、執務の合間に屋上に出て囁き合っていた。耳を患って難聴だったので、相手も勢い声高になる。しばらくして同僚のYが慌てて駆け上がり、顔を赤らめながら、下の技術室に筒抜けだと告げてくれた。気づけば直径二メートルもある集音機の真下で囁き合っており、その台詞は永く職場の酒の肴になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考・1990年代初期(平成初期))
松谷みよ子『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』を小話単位で全550話収録。心霊写真など写真の怪と、文明開化期の怪異にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明377話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。