夢で見た藪陰の家
どんな伝承か
昭和十年ごろ、語り手は板橋区練馬南町に住んでいた。あたりはまだ武蔵野の面影が濃く、雑木林とゆるやかに起伏する畑が続いていて、子供ながらひとりで歩き回るのが好きだった。ある日、藪かげを回ったところでぎょっとした。林の奥まったところに建つ家と門のあたりが、夢に見た風景とそっくりだったのである。しんと静まりかえった恐ろしさは今も忘れられないという。それきり、その家をもう一度見たいと思って何度も探したが、歩き慣れた界隈なのに二度とたどり着けなかった。
原典より
昭和五十年の summerのこと。—— 現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。