盥に伏せられた伯父の魂
どんな伝承か
遠野町役場に勤めている某の語った実話である。この人の伯父が大病で長く寝ていた頃、ある夜、家の土間に行きかかると、馬舎の口から火の魂がふらふらと入って来て、土間の中を低くゆるやかに飛び廻った。某は怪しんで箒であちこち追い廻し、そばにあった盥の下に追い伏せた。そこへ人が来て、伯父が危篤だからすぐ来てくれと言う。盥を開けてから出かけ、伯父の家に行くと、病人は一度息を引き取って今生き返ったところで、「今こいつの家に行ったら、箒で追い廻されたあげく頭から盥をかぶせられた。ああ苦しかった」と溜息をついたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。