柿の大樹に現れて火を鎮めた不動尊
どんな伝承か
明治三〇年頃の話。生家は当時、町一流の荒物商であった。新春の真昼に火が出て、四棟並んだ末端の物置が発火点となり、続く板倉に猛火が迫った。そのとき板倉を覆う柿の大樹の板の上に、成田の不動尊が現れ、団扇を揮って火勢を鎮めておられた。これに気づいた父は母屋の祖母のもとへ駆けつけ、「おばあさま、不動尊があおいで下さってるよ」と告げた。当日は消防点検の昼食時で、幸いに大事に至らず消しとめられた。放火の犯人は女中の恋人の醤油職人で、彼女に逢いたさのお七もどきだったという。柿の樹は現在樹齢約二五〇年、ほとんどウロだが枯れず、今も豊かに実を生らせている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)