「成らぬとぶったぎる」と迫る成木責め
どんな伝承か
昭和一〇年代まで行われていた行事である。旧暦正月一六日の朝、弟と三人で栗・梨・ぐみ・柿などの果樹を一本ずつ回り、刃物、主に鉈を手にした者が「成るか、成らぬか、成らぬとぶったぎる」と怒鳴る。すると木の裏側にいる者が「実をつけます。いっぱい実がなります」と答え、次の木へ移っていく。東北の貧しい暮らしでは果樹の実は大切な食糧だったから、豊年と多収穫を祈る行事だったと語り手は考えている。斧の峰で打ちながら行う人たちもいた。遠くへは行かず、家のまわりの木で営むことが多かったが、戦時中になって消えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。