梅干を嫌う底なし渕の主
どんな伝承か
平治川の山中には雄滝、雌滝、その上に蛇の滝という七色の滝がある。滝には渕があり、なかでも底なし渕の主は蛇で、今は滝不動明王が祀られている。主が嫌うのは梅干と谷を汚すことで、渕に梅干を投げ込むとたちまち雷が鳴って大雨になり、しかも雨は平治川筋にだけ降るという。遠足の生徒が梅干を投げ込んで大荒れになったこともある。日照りの年には物好きな男が牛屋肥を担いで投げ込み、たちまち雷雨を呼んだ。大正元年には国有林伐採で入った飛騨の一家が滝の上で洗い物をして山崩れに遭い、みな死体となった。昭和の初め頃には、梅干を谷へ捨て滝の近くで小便をした道湯川の寺尾という人の家が、一月もたたぬうちに丸焼けになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。