宮良川にとばらま節を歌う三人の乙女の霊
どんな伝承か
石垣島の宮良川は、於茂登岳から流れ下り、大浜村と宮良村の間で広がって海に注ぐ景勝地だが、夜になると三人連れの若い女の幽霊が出ると恐れられた。幽霊は白保村の仲良しの乙女三人である。村には、よその部落の若者と通じた乙女を裸で木に縛り、皆の前で鞭打つという厳しい掟があったが、三人は芋や野菜を頭にのせて四ヵ村の市場へ売りに通ううち、それぞれ士族の若者と恋仲になった。ある夜、恋人に会った帰り、橋の上の松明を見張りと思い込み、下流の浅瀬を渡ろうとして珊瑚礁の割れ目に落ち、死体もあがらなかった。松明は夜釣りの漁火にすぎなかった。初七日の晩から、丑満どきに悲恋の歌「とばらま節」を途中まで歌っては途切れさせる三人の幽霊が現れるようになり、登野城の豪胆な青年や白保小学校の校長らもその声を聞いたと伝わる。
原典より
宮良川の附近から島の悲恋(ひれん)の情歌「とばらま節」を歌って現われるのであるが、幽霊の歌は、最後までうたわずに、尻切(しりきれ)トンボになって、ぽつりと切れる、といわれている。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。