心中に死に遅れ遺体を抱いて二日寝た男
どんな伝承か
昭和七年四月三十日の夜から、横浜市中区久保町の下宿屋越後屋こと松川某(仮名)方に投宿していた男女が、五月二日の朝になっても起き出さないので、主人が不審に思って部屋を覗くと、男は泥酔して女の死骸を抱いており、室内は屍臭がぷんぷんとしていた。驚いて最寄りの交番に届け出て取り調べたところ、男は神奈川区に住む市の衛生人夫松田七郎(仮名・三十三歳)で、妻きくの弟子である畠山よね二十四歳と仲良くなったのを妻に見つけられ、よねを連れて四月二十七日に家出し、三十日夜に越後屋で心中しようと猫イラズを飲み、女は死亡、男は死に遅れて酒びたりとなり、二日間よねの死体を抱いて寝ていたのであった。
原典より
「横浜市中区久保町下宿屋越後屋事松川某(仮名)方に、去る三十日(昭和七年四月)夜以来投宿中の男女が、二日朝起出でぬに不審を抱き、主人が部屋をのぞくと、男は泥酔して女の死骸を抱いており、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。