怪談扶桑鏡・人形と初浪の心中
どんな伝承か
怪談扶桑鏡に収められた人形の怪である。江戸の旗本土田銀次郎は品川宿の遊女初浪と深い仲だったが、京都二条城の在番を命じられて江戸を離れた。忘れられない銀次郎は大坂の人形師竹田細工に頼んで初浪そっくりの人形を作らせ、初浪と名づけて寝起きを共にした。七月十六日の夜、戯れに恋しいと話しかけると、人形が初浪の声で答えた。驚いた銀次郎は狐狸の仕業と考え、人形の首をはねた。一年後に江戸へ戻ると、初浪は前年、浪人者に寝首をかかれ無理心中させられていた。それは人形の首をはねたのと同じ日の同じ刻限だったという。
原典より
一年前、銀次郎が京都の長屋で人形の首を刎ねた同月同日の同時刻に当たる。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。