人貝を食って四百年生きた男
どんな伝承か
筆者が幼い頃に母と詣でた岩沼の青麻権現は、平泉清悦を祭神とする。清悦は源義経の家来で、義経が高館で討死したのちも四百六十余歳まで生きたという。清悦が友人二人と衣川へ釣りに行くと、修験者風の男が先に来てよく釣り上げていた。日が落ちて男の庵に招かれると、そこは中尊寺の光堂のように金銀を塗った立派な屋敷であった。男が珍味だと出したのは、赤児のようなものの塩漬けである。清悦はためらいながら二つ食べた。男はこれを人貝といい、海底深くに棲むと語った。清悦の長寿はこの人貝によるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。