産の床で見た花咲く野と僧たち
どんな伝承か
昭和五年の秋頃の話である。一番下の女の子のお産のとき、多量の出血のため、分娩と同時に人事不省になった。そのとき、広いきれいな野原にいて、その向こうに大きな川のようなものがあり、向こう岸では墨染の衣を着た立派な若い僧たちが経を唱えていた。あたりには美しい花が一面に咲き、きれいな鳥がピイチクと鳴いて飛びかっている。なんとかして早くそこへ行きたいと思い、水車のような階段に乗るとずるりと落ちた。僧に頼もうとすると、いけない、と手を振られる。困っていると遠くから婆やが自分を呼ぶ声がかすかに聞こえ、ふと我に返った。枕元では皆が心配そうな顔をしていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。