朝に響いた姿なき男の挨拶
どんな伝承か
昭和五十八年初夏のことである。ある朝早く、若い男の人の声がした。朝なのに、こんにちは、と言って来たのである。語り手はその声で目が覚め、はい、と答えて起き、戸を開けてみたが、そこには誰の姿もなかった。不思議なこともあるものだと思っていたところ、幾日も経たないうちに、次の村の三十代ほどの若い者が急死した。それでも自分は少しも怖くはない、神様や仏様を拝んでいるからだ、と語り手は述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。