窓から空を見ていた娘の凄艶な影
どんな伝承か
小説家の綿貫六助が仙台の歩兵連隊にいたころ、広瀬川に沿う薄暗い樹立ちの中の大工の家の二階に下宿していた。蒸し暑い月の明るい晩、眠っていた綿貫は何かの気配に目を覚ます。枕元の縁側でばさりと音がし、墨絵のような黒い影がぼんやり浮かんだかと思うと、美しい女の姿になって梯子段の方へ歩き、段の際でちらとこちらをふり返った。何とも言いようのない凄艶な顔であったという。翌日、近くの下宿へ移った綿貫が調べると、その家にはこの春まで肺を患う若い娘が住み、いつも二階の窓から華美な衣服を見せて寂しそうに空を見ていたが、病が重くなって他所へ越したという。娘の死んだ時刻は、綿貫が怪異を見た時刻と同じであった。
原典より
* 手鏡 (236)* 瘤の運動 (237)* 格子戸に挟まれた老婆 (239)* 謎の客 (240)* 天井からぶらさがる足 (243)* 奇蹟の処女 (244)* 殺した実母が迎えに来る…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
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