花も光もない安らかな暗闇
どんな伝承か
川崎市の市川清美さんは昭和五十四年の交通事故で頭蓋骨骨折や脳挫傷を負い、三週間意識が戻らなかった。医者は助かっても植物状態だと言ったが、奇跡的に回復した。その間に見たのは、川も花畑も神仏も光もない、ただ暗い世界だった。しかし闇は息苦しいものではなく、心は穏やかで、自分が死にゆくことをはっきり自覚していた。誰かの、これで死ぬのならそれでも良いという声に、生きたいように生きてきたから良いとはっきり答えると、病室のベッドで意識が戻った。自分の死を受け入れたら戻ってきたと感じ、以来死を恐れなくなったという。
原典より
お花畑も川も神も仏も無い、ただ真っ暗闇の無の世界が私の見た死の世界です。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。