雲間をよぎる銀白の十字形
どんな伝承か
作家の光瀬龍が五歳だった昭和八年秋の記憶である。当時、家は練馬にあった。朝から降っていた雨が午後にやみ、雲が高くなった時分、三歳上の姉と二階の手すりにつかまって外を眺めていた。ふと真上を見ると、南から北へ川のように延びる雲の切れ目があり、そこから青空がのぞいていた。突然、雲の陰から奇妙なものが現れた。全体が銀白色で煙のように柔らかく、腕を伸ばして見た百円硬貨ほどの大きさ。外側の輪と中央の十字の間からは背後の青空が透けていた。物体は音もなく切れ間を横切り、反対側の雲へ入っていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
UFO遭遇事典(南山宏(編)・UFO・未確認現象)
『UFO遭遇事典』は、南山宏が編んだUFO現象の事典である。J・A・ハイネックによる目撃報告の分類と接近遭遇の三区分、南山によるUFO実在の根拠と研究史、並木伸一郎による一八八三年から一九七八年までの内外の事件史、UFOの飛行原理や考古学、地球外生物の生態を論じる章を収める。序章と五つの章を数人の筆者が分担し、事件史の各項には接近遭遇の種別を星印で示し、横尾忠則・手塚治虫・光瀬龍のコラムを挟む。