苦情に屈して戻った運勢暦
どんな伝承か
東京都大田区の区民会館は昭和三〇年の開館以来、新生活運動を掲げ、館内の結婚式場では式の日取りを決めるのに運勢暦をいっさい用いず、問い合わせにも応じない方針を通していた。ところが区民から、昔からの慣わしをなぜ破るのかという苦情が相次ぎ、四年後にはとうとう運勢暦を備え、日取りの問い合わせにも答えるようになったという。干支や運勢は迷信の代表とされながら、年末年始になれば新聞も放送局も当たり年生まれの有名人を引っぱり出す。万全を期そうとすれば、人はどうしても長年の経験に身をまかせたくなるものらしい、と著者は書いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。